今年は富士山に登れなかったので周辺散策に行ってきた
先週13日から15日にかけて富士山に行ってきた。
今年は富士山登頂を目指した富士登山には行けなかったのだが、その代わりと言っては何だが、5合目までのルートを中心に歩き回ってきた。
今回は訳あってGPSは携帯していなかったのだが、後半部分はGPSでログをとっておきたかったなぁ。
で、半ば恒例になっているけど、今回の記録についても相当危ないことをやっている。
真似しちゃだめだよ。どっちの人も。中途半端に失敗してもなんだから。
さて、山に入る前にまずは神様にごあいさつ。今回訪れたのは河口湖畔にある富士御室浅間神社である。

もともとこの場所は里宮なのだが、

吉田口2合目にあった山宮もここに移築されている。

山宮は吉田口にあったわけだが、吉田口登山道の起点がこの場だったというわけではない。いくらなんでもそんな遠回りはしないだろう。さらに言えば、船津口登山道というものも比較的近くにあるが、これの起点もここではないと思う。ということで、私もここから直接富士山に登るというコースは取らない。
まずは、道の駅なるさわの近くにある溶岩樹型を見物しに行くことにする。
まぁ、本来ならば県道714号線に出たところでバスに乗るところなのだが、このバスの本数が少なく、待っている時間に歩けてしまうのではないかということで、この区間も歩くことにする。
しかし夏が終わったとはいえ、まだまだ暑い。河口湖駅から御室浅間神社まで約30分、神社から溶岩樹型まで約1時間40分。時間・距離的には大したことないのだが、それなりに体力を消耗した。
そんなこんなで到着した溶岩樹型。

溶岩樹形というのは、流れてきた溶岩が木を呑みこんで冷え固まり、その呑み込まれた木が燃え尽きることによってできた穴のことである。特別天然記念物に指定されるだけのことがあり、珍しい地形といえよう。ここ、鳴沢溶岩樹型群はそんな穴がいくつも見られるのだ。

鳴沢の溶岩樹型はこのように縦穴が多いのだが、呑み込まれた木が倒れていれば横穴型の溶岩樹型もできるわけだ。
溶岩樹型見物の後、すぐ近くにある道の駅なるさわで一休み。言い忘れていたが、この時は前日の夕食以降何も食べていなかった。水分補給はこまめにしていたものの、水と無糖茶のみ。この道の駅でスポーツ飲料を飲んだがこれに含まれるカロリーくらいしかエネルギーの補給はしていない。しかしそれほど空腹は感じなかったなぁ。それに、それほど高低差のない平たんな道のりだったせいもあるが、歩いていてエネルギー切れを感じることもなかった。
ゆっくり休憩した後、県道71号線を通って、目指すは富士風穴。風穴というと富岳風穴や鳴沢氷穴などが有名だが、そのような観光地化された風穴ばかりではない。富士山周辺にはいろいろな穴があるのだ。
そういえば県道71号線との合流点近くに鳴沢蝙蝠穴というのもあったようだけれど、ここには行き損ねた。蝙蝠穴も有名なのは西湖蝙蝠穴なのだけれども。
とにかく1時間以上歩いたころに、県道71号線と精進湖口登山道が交差する場所に到着する。

バスの時刻がうまい具合に合えば道の駅なるさわから赤池までバスで移動し、精進湖口登山道を最初から楽しむということもできたかもしれないのだが、バスがないから…。まぁ、途中からといえど精進湖口登山道の一合目より下から歩いているのだからまぁよいか。
精進湖口登山道を歩き始めて10分ほどすると、富士風穴の入り口が見えてくる。

穴そのものの入り口は窪地の底にあるのだが、穴に入らずともこの窪地には冷気がたまっており、かなりひんやりとしている。

せっかくだから中に入ってみる。しかし結論から言うと失敗。
まず第一に光量不足。ここは観光地化されていないから当然洞内に照明などない。もちろん私はヘッドライトは装備してはいるのだが、洞内の広さに対し、一個のヘッドライトでは全く光量が足りておらず、洞内を見渡せるような状況にはなかった。ここはヘッドライトをそれぞれが装備した複数人で行くか、一人で複数個のライトを装備するなどして光量を補わなければ楽しめないのではなかろうか。
第二に時期が悪かった。水面に薄氷は張っているものの、凍りついてはいないため(光量不足で足元が不安ということもあり)奥までは進めなかった。一応、軽アイゼンなども準備してはいたのだが、今の時期なら軽アイゼンよりも長靴の方が役に立ったかもしれない。それに凍りついていれば氷によって光が反射して、多少は洞内を見渡しやすくなったかもしれない。とにかく見るならやはりもっと寒い時期のほうがよかったようだ。

そんなこんなで富士風穴を後にして、さらに精進湖口登山道を進むことに。
精進湖口登山道というのは樹海の真っただ中を通る道であり、字面で見ると物々しいが、実際にはごく普通のハイキングコースと大差ない。道筋がはっきりしているからわざわざコンパスを取り出してみることはなかったのだが、コンパスが狂うということもないはずである。まぁ地面に直置きすれば多少狂うかもしれないけれども、普通に使用する分には問題ないはずである。
そうこうしているうちに日没。暗くなってきた。
予定では完全に暗くなる前に5合目付近まで行くつもりだったのだけれども、出発時間がやや遅めになってしまったことによりバスの時間が合わなくなり、相当時間をロスしていたので、予定よりだいぶ下で暗くなってしまったのだ。道筋がはっきりしており、暗くなっても迷う心配はなかったのでしばらくは進んだのだが、いい加減足も疲れてきたので、3合目付近で一夜を明かすことに。
まぁここまではごく普通のハイキング記録である(もちろんここまでの中にも真似してはいけない部分があるにはあるが)。しかしここから先は本当に真似しちゃいけない。(真似されたくなければ書かなければよいという突込みはとりあえず却下)
この日の鳴沢村の予想最低気温は16度であった。この3合目というのは村の中心部と比べて700メートルくらいは標高が高いから、計算上は4度くらい低い12度前後まで下がる可能性があるわけだ。まぁ実際にはそう単純なものでもないだろうけれども少なくとも15度以下にはなるんじゃないかな。
そういう環境でである。24時間以上の絶食をし、平地を暑い中数時間、山道を数時間歩いて体力もそこそこ使った者が、汗でビショビショの服のまま、アルコール度数25度の焼酎220mlカップ2杯飲んで屋外で寝たわけである。
9時間ぐっすり眠ったなぁ。いや、翌朝目を覚ました時、二日酔い状態だったことを考えると睡眠というより昏睡に近かったのかな?
でも二日酔い以外何の症状も出なかった。夏の間には花火大会やら屋外ライブやらでゲリラ豪雨に合った程度で低体温症で救急搬送されたものがいるくらいなのに、それより過酷な状況だったと思うんだけどなぁ。
まぁ、仕方がないから、日が昇って暖かくなってきたし、二日酔いの症状が改善するまでもう3時間ほど睡眠をとって、さらに上を目指す。
精進湖口登山道の3合目以降は船津口登山道旧バス通りと合流しているので、なお一層道筋がはっきりしている。
体を冷やしたことにより股関節痛やひざ痛が出るかと思ったのだが、特にそのような兆候はない。十分な休息をとったこともあり、むしろ快調といえるくらい。
途中で雨が降り始めるものの、生い茂った木のおかげで、レインスーツを着るまでもなくそれほど濡れない。
そんなこんなで4合目に到着。ここには山小屋跡の廃墟があるのだが、その向かい側には小御岳第一氷穴がある。

入口の所に木枠があるところをみると中に入ることができるのかな?でも入り口までの斜面の落ち葉の積もり具合からみると、長いこと誰も入っていなそうに見える。後で調べてみたところ、この第一氷穴は15メートルくらいの長さしか確認されていないらしい。実際はもっと長いことをうかがわせる表記の仕方だけれど。
今回は気分が乗らなかったので入ってみることはせず、上から眺めただけ。第二氷穴や第三氷穴も付近にあるはずだけれど、その探索も今回はパス。さらに上へ向かう。
そしてスバルライン5合目駐車場に到着。今回は精進湖口登山道は途中からの踏破となってしまったが、赤池から県道71号線までの区間も今回歩いた区間と同程度に整備されているのだとしたら、距離こそ長いものの非常に歩きやすいルートのように感じた。ふもとから富士登山する際の選択肢としては十分なコースだろう。むしろ距離が長いだけで物足りなさすら感じてしまうかもしれない。そう考えると、精進湖口登山道を直登するのではなく、寄生火山がたくさんあるルートなので、寄り道しながら登った方が断然楽しいだろう。あと風穴類も富士風穴や小御岳氷穴だけでなく、寄り道すれば他にも多数あるし。
五合目は相変わらずの人の多さである。もう九月中旬だというのにまだ山頂を目指す(?)ツアーなどもあるようである。霧雨程度とはいえ雨が降ったりやんだりしているようななか次々と団体が出発していく。というか台風が近づいてきている中、本当に頂上を目指すの?馬鹿じゃないの?シーズン中だって台風が近づいているときには登るのはやめておいた方がよいのに、今はオフシーズンなんだよ?いや、人のことを批判できる立場じゃないんだけどさ。
そんな団体を見送りながら、神社に参拝に行ったりトイレに行ったり休憩室でダラダラしたりと時間をつぶす。でも食事はしない(笑)。でもまたここでスポーツ飲料を買って飲んじゃったんだよな。カロリー有りのやつを。
しばらくして雨がやんだころを見計らって私も出発。適当なところで道から外れた林の中に。もっと高度を上げれば気温は下がるかもしれないけれど、樹林帯を抜けちゃうと目立っちゃうからね。
暗くなるまでは本を読んだりしながら時間をつぶす。暗くなると頂上までの各山小屋の明かりが煌々と灯っている。ということはやはり登頂を目指す人たちが少なからずいるということか。
何度も繰り返しになるが、ここからまた真似してはいけないところである。
夜になってもしばらくは月が見えたりするような天気だったのだが、台風の影響もあって雨が降り始める。そしてだんだん強い降り方になってくる。風も強くなってくる。計算上最低気温が10度以下になる場所である。絶食時間は48時間を超えている。前日と比べて運動量は少ないものの、それでも山道を数時間は歩いてそれなりに体力を消耗したはずである。レインスーツを着ることもなくびしょぬれになったところでアルコール度数25度の焼酎220mlカップ1杯を飲んで寝る。本当は2杯飲みたいところではあったのだが、持ってきていたのが前日分と合わせて3杯分だけなので仕方がない。というかこの1杯というのもあくまでも予備として持ってきただけで本来は使用しない予定だったんだが…。
さすがに焼酎1杯だけでは朝まで眠ることができなかった。日の出前に目が覚めてしまった。いまだに強い雨が降り、風が吹き付けてくる。震えが止まらなかったから、それなりに体温も下がっていたことだろう。しかしそれも日の出までの間のわずかな時間に過ぎなかった。日の出時間を過ぎるころになると震えも徐々におさまってくる。体温が下がり過ぎて感覚がマヒしたわけではなく、単純に気温が上がり始めたから。そうこうしているうちに雨もやんできてしまう。というか日まで差してくる。虹なんかも出ちゃったりして。
仕方がないからあきらめて帰宅することにする。とはいってもあからさまにびしょぬれの状態で人前に出ると通報されたりして面倒だから適度に水気が切れるまで待ってからの出発である。
よく見れば濡れていることが分かるもののパッと見た目では分からない程度まで水気が切れたところでスバルライン五合目に戻って水を購入。でもやっぱり食事はしない(笑)。
しかし一昨年だったか、7月中旬にもっと標高の低い御殿場口五合目で一夜を過ごした時は、濡れていたわけでもないのに「これはけっこう危なかったなぁ」と感じたものだけれどねぇ。
ここから須走口に向かうことにする。六合目まで登りコノスジ中途道を使っていく。もう何回も通ったルートだ。
ただ今回はちょっと趣向を変える。例の、コノスジ中途道の途中から砂払い五合目へ向かう、あのルートに挑戦してみようというのだ。
相変わらず体を冷やした割には股関節痛もひざ痛も出ていない。というか、絶食時間が60時間を超え、その間それなりの距離を山歩きし、夜は体温維持のために相当エネルギーを消費したであろうに、須走口五合目までの行程に体力的不安を全く感じないって…。さらに言えば低体温症どころか肺炎の兆候もないって…。
まぁとにかく進むのみ。
思ったとおり、例の分岐の所から謎のルートに突入すると、踏み跡がはっきりしているのは最初だけ。おまけにマーキングの間隔が長すぎて次のマーキングが見つけられない状態。踏み跡が不明瞭なところもあれば、逆にキノコ採りの踏み跡であろうか、複数の踏み跡が混在しているところもある。まぁ人が通ったことがあるのはペットボトルやら空き缶やらが所々に落ちていることからもわかるのだがルートははっきりしない。
いつもならGPSで位置を確認しながら進むところだが、今回はGPSを持ってきていない。とりあえずコンパスを見て南に向かうように進路を決めて進む。南に向かっていれば本来のルートから外れていたとしてもどこかで須走口登山道にぶつかるはずだから。
で、そうこうしているうちに何とか須走口登山道にぶつかった。思っていたより下に接続したなぁ。

本来のルートはもっと上で、本当に砂払い五合目まで行けるのかもしれないけれど、とりあえず今回接続した部分にも踏み跡が残っていることから考えると、正規のルートかは別として、主にキノコ採りの人であろうがここを通っている人が少なからずいるということだろう。GPSのログがあればもう少し詳しく分析して正規のルートを推測することもできたかもしれないけれども、惜しいことをした。でも、もともとはここを通ることは予定になかったのだから仕方がない。
そんなこんなで須走口五合目に無事到着。さすがに人は少ない。まぁ台風が近づいてきているのだから当然か。それでもごく少数ながら駐車場から山小屋方向に向かってくる人もいる。まさかこれから登頂を目指すわけではあるまい。小富士までのハイキングか?キノコ採りにいくにしては少々遅い時間だし。
帰宅後体重を量ってみたら、絶食72時間で、あれだけ苦労したのに出発前より2kgしか減ってなかった。どんだけ省エネ体質なんだよ私は!!
今年は富士山登頂を目指した富士登山には行けなかったのだが、その代わりと言っては何だが、5合目までのルートを中心に歩き回ってきた。
今回は訳あってGPSは携帯していなかったのだが、後半部分はGPSでログをとっておきたかったなぁ。
で、半ば恒例になっているけど、今回の記録についても相当危ないことをやっている。
真似しちゃだめだよ。どっちの人も。中途半端に失敗してもなんだから。
さて、山に入る前にまずは神様にごあいさつ。今回訪れたのは河口湖畔にある富士御室浅間神社である。

もともとこの場所は里宮なのだが、

吉田口2合目にあった山宮もここに移築されている。

山宮は吉田口にあったわけだが、吉田口登山道の起点がこの場だったというわけではない。いくらなんでもそんな遠回りはしないだろう。さらに言えば、船津口登山道というものも比較的近くにあるが、これの起点もここではないと思う。ということで、私もここから直接富士山に登るというコースは取らない。
まずは、道の駅なるさわの近くにある溶岩樹型を見物しに行くことにする。
まぁ、本来ならば県道714号線に出たところでバスに乗るところなのだが、このバスの本数が少なく、待っている時間に歩けてしまうのではないかということで、この区間も歩くことにする。
しかし夏が終わったとはいえ、まだまだ暑い。河口湖駅から御室浅間神社まで約30分、神社から溶岩樹型まで約1時間40分。時間・距離的には大したことないのだが、それなりに体力を消耗した。
そんなこんなで到着した溶岩樹型。

溶岩樹形というのは、流れてきた溶岩が木を呑みこんで冷え固まり、その呑み込まれた木が燃え尽きることによってできた穴のことである。特別天然記念物に指定されるだけのことがあり、珍しい地形といえよう。ここ、鳴沢溶岩樹型群はそんな穴がいくつも見られるのだ。

鳴沢の溶岩樹型はこのように縦穴が多いのだが、呑み込まれた木が倒れていれば横穴型の溶岩樹型もできるわけだ。
溶岩樹型見物の後、すぐ近くにある道の駅なるさわで一休み。言い忘れていたが、この時は前日の夕食以降何も食べていなかった。水分補給はこまめにしていたものの、水と無糖茶のみ。この道の駅でスポーツ飲料を飲んだがこれに含まれるカロリーくらいしかエネルギーの補給はしていない。しかしそれほど空腹は感じなかったなぁ。それに、それほど高低差のない平たんな道のりだったせいもあるが、歩いていてエネルギー切れを感じることもなかった。
ゆっくり休憩した後、県道71号線を通って、目指すは富士風穴。風穴というと富岳風穴や鳴沢氷穴などが有名だが、そのような観光地化された風穴ばかりではない。富士山周辺にはいろいろな穴があるのだ。
そういえば県道71号線との合流点近くに鳴沢蝙蝠穴というのもあったようだけれど、ここには行き損ねた。蝙蝠穴も有名なのは西湖蝙蝠穴なのだけれども。
とにかく1時間以上歩いたころに、県道71号線と精進湖口登山道が交差する場所に到着する。

バスの時刻がうまい具合に合えば道の駅なるさわから赤池までバスで移動し、精進湖口登山道を最初から楽しむということもできたかもしれないのだが、バスがないから…。まぁ、途中からといえど精進湖口登山道の一合目より下から歩いているのだからまぁよいか。
精進湖口登山道を歩き始めて10分ほどすると、富士風穴の入り口が見えてくる。

穴そのものの入り口は窪地の底にあるのだが、穴に入らずともこの窪地には冷気がたまっており、かなりひんやりとしている。

せっかくだから中に入ってみる。しかし結論から言うと失敗。
まず第一に光量不足。ここは観光地化されていないから当然洞内に照明などない。もちろん私はヘッドライトは装備してはいるのだが、洞内の広さに対し、一個のヘッドライトでは全く光量が足りておらず、洞内を見渡せるような状況にはなかった。ここはヘッドライトをそれぞれが装備した複数人で行くか、一人で複数個のライトを装備するなどして光量を補わなければ楽しめないのではなかろうか。
第二に時期が悪かった。水面に薄氷は張っているものの、凍りついてはいないため(光量不足で足元が不安ということもあり)奥までは進めなかった。一応、軽アイゼンなども準備してはいたのだが、今の時期なら軽アイゼンよりも長靴の方が役に立ったかもしれない。それに凍りついていれば氷によって光が反射して、多少は洞内を見渡しやすくなったかもしれない。とにかく見るならやはりもっと寒い時期のほうがよかったようだ。

そんなこんなで富士風穴を後にして、さらに精進湖口登山道を進むことに。
精進湖口登山道というのは樹海の真っただ中を通る道であり、字面で見ると物々しいが、実際にはごく普通のハイキングコースと大差ない。道筋がはっきりしているからわざわざコンパスを取り出してみることはなかったのだが、コンパスが狂うということもないはずである。まぁ地面に直置きすれば多少狂うかもしれないけれども、普通に使用する分には問題ないはずである。
そうこうしているうちに日没。暗くなってきた。
予定では完全に暗くなる前に5合目付近まで行くつもりだったのだけれども、出発時間がやや遅めになってしまったことによりバスの時間が合わなくなり、相当時間をロスしていたので、予定よりだいぶ下で暗くなってしまったのだ。道筋がはっきりしており、暗くなっても迷う心配はなかったのでしばらくは進んだのだが、いい加減足も疲れてきたので、3合目付近で一夜を明かすことに。
まぁここまではごく普通のハイキング記録である(もちろんここまでの中にも真似してはいけない部分があるにはあるが)。しかしここから先は本当に真似しちゃいけない。(真似されたくなければ書かなければよいという突込みはとりあえず却下)
この日の鳴沢村の予想最低気温は16度であった。この3合目というのは村の中心部と比べて700メートルくらいは標高が高いから、計算上は4度くらい低い12度前後まで下がる可能性があるわけだ。まぁ実際にはそう単純なものでもないだろうけれども少なくとも15度以下にはなるんじゃないかな。
そういう環境でである。24時間以上の絶食をし、平地を暑い中数時間、山道を数時間歩いて体力もそこそこ使った者が、汗でビショビショの服のまま、アルコール度数25度の焼酎220mlカップ2杯飲んで屋外で寝たわけである。
9時間ぐっすり眠ったなぁ。いや、翌朝目を覚ました時、二日酔い状態だったことを考えると睡眠というより昏睡に近かったのかな?
でも二日酔い以外何の症状も出なかった。夏の間には花火大会やら屋外ライブやらでゲリラ豪雨に合った程度で低体温症で救急搬送されたものがいるくらいなのに、それより過酷な状況だったと思うんだけどなぁ。
まぁ、仕方がないから、日が昇って暖かくなってきたし、二日酔いの症状が改善するまでもう3時間ほど睡眠をとって、さらに上を目指す。
精進湖口登山道の3合目以降は船津口登山道旧バス通りと合流しているので、なお一層道筋がはっきりしている。
体を冷やしたことにより股関節痛やひざ痛が出るかと思ったのだが、特にそのような兆候はない。十分な休息をとったこともあり、むしろ快調といえるくらい。
途中で雨が降り始めるものの、生い茂った木のおかげで、レインスーツを着るまでもなくそれほど濡れない。
そんなこんなで4合目に到着。ここには山小屋跡の廃墟があるのだが、その向かい側には小御岳第一氷穴がある。

入口の所に木枠があるところをみると中に入ることができるのかな?でも入り口までの斜面の落ち葉の積もり具合からみると、長いこと誰も入っていなそうに見える。後で調べてみたところ、この第一氷穴は15メートルくらいの長さしか確認されていないらしい。実際はもっと長いことをうかがわせる表記の仕方だけれど。
今回は気分が乗らなかったので入ってみることはせず、上から眺めただけ。第二氷穴や第三氷穴も付近にあるはずだけれど、その探索も今回はパス。さらに上へ向かう。
そしてスバルライン5合目駐車場に到着。今回は精進湖口登山道は途中からの踏破となってしまったが、赤池から県道71号線までの区間も今回歩いた区間と同程度に整備されているのだとしたら、距離こそ長いものの非常に歩きやすいルートのように感じた。ふもとから富士登山する際の選択肢としては十分なコースだろう。むしろ距離が長いだけで物足りなさすら感じてしまうかもしれない。そう考えると、精進湖口登山道を直登するのではなく、寄生火山がたくさんあるルートなので、寄り道しながら登った方が断然楽しいだろう。あと風穴類も富士風穴や小御岳氷穴だけでなく、寄り道すれば他にも多数あるし。
五合目は相変わらずの人の多さである。もう九月中旬だというのにまだ山頂を目指す(?)ツアーなどもあるようである。霧雨程度とはいえ雨が降ったりやんだりしているようななか次々と団体が出発していく。というか台風が近づいてきている中、本当に頂上を目指すの?馬鹿じゃないの?シーズン中だって台風が近づいているときには登るのはやめておいた方がよいのに、今はオフシーズンなんだよ?いや、人のことを批判できる立場じゃないんだけどさ。
そんな団体を見送りながら、神社に参拝に行ったりトイレに行ったり休憩室でダラダラしたりと時間をつぶす。でも食事はしない(笑)。でもまたここでスポーツ飲料を買って飲んじゃったんだよな。カロリー有りのやつを。
しばらくして雨がやんだころを見計らって私も出発。適当なところで道から外れた林の中に。もっと高度を上げれば気温は下がるかもしれないけれど、樹林帯を抜けちゃうと目立っちゃうからね。
暗くなるまでは本を読んだりしながら時間をつぶす。暗くなると頂上までの各山小屋の明かりが煌々と灯っている。ということはやはり登頂を目指す人たちが少なからずいるということか。
何度も繰り返しになるが、ここからまた真似してはいけないところである。
夜になってもしばらくは月が見えたりするような天気だったのだが、台風の影響もあって雨が降り始める。そしてだんだん強い降り方になってくる。風も強くなってくる。計算上最低気温が10度以下になる場所である。絶食時間は48時間を超えている。前日と比べて運動量は少ないものの、それでも山道を数時間は歩いてそれなりに体力を消耗したはずである。レインスーツを着ることもなくびしょぬれになったところでアルコール度数25度の焼酎220mlカップ1杯を飲んで寝る。本当は2杯飲みたいところではあったのだが、持ってきていたのが前日分と合わせて3杯分だけなので仕方がない。というかこの1杯というのもあくまでも予備として持ってきただけで本来は使用しない予定だったんだが…。
さすがに焼酎1杯だけでは朝まで眠ることができなかった。日の出前に目が覚めてしまった。いまだに強い雨が降り、風が吹き付けてくる。震えが止まらなかったから、それなりに体温も下がっていたことだろう。しかしそれも日の出までの間のわずかな時間に過ぎなかった。日の出時間を過ぎるころになると震えも徐々におさまってくる。体温が下がり過ぎて感覚がマヒしたわけではなく、単純に気温が上がり始めたから。そうこうしているうちに雨もやんできてしまう。というか日まで差してくる。虹なんかも出ちゃったりして。
仕方がないからあきらめて帰宅することにする。とはいってもあからさまにびしょぬれの状態で人前に出ると通報されたりして面倒だから適度に水気が切れるまで待ってからの出発である。
よく見れば濡れていることが分かるもののパッと見た目では分からない程度まで水気が切れたところでスバルライン五合目に戻って水を購入。でもやっぱり食事はしない(笑)。
しかし一昨年だったか、7月中旬にもっと標高の低い御殿場口五合目で一夜を過ごした時は、濡れていたわけでもないのに「これはけっこう危なかったなぁ」と感じたものだけれどねぇ。
ここから須走口に向かうことにする。六合目まで登りコノスジ中途道を使っていく。もう何回も通ったルートだ。
ただ今回はちょっと趣向を変える。例の、コノスジ中途道の途中から砂払い五合目へ向かう、あのルートに挑戦してみようというのだ。
相変わらず体を冷やした割には股関節痛もひざ痛も出ていない。というか、絶食時間が60時間を超え、その間それなりの距離を山歩きし、夜は体温維持のために相当エネルギーを消費したであろうに、須走口五合目までの行程に体力的不安を全く感じないって…。さらに言えば低体温症どころか肺炎の兆候もないって…。
まぁとにかく進むのみ。
思ったとおり、例の分岐の所から謎のルートに突入すると、踏み跡がはっきりしているのは最初だけ。おまけにマーキングの間隔が長すぎて次のマーキングが見つけられない状態。踏み跡が不明瞭なところもあれば、逆にキノコ採りの踏み跡であろうか、複数の踏み跡が混在しているところもある。まぁ人が通ったことがあるのはペットボトルやら空き缶やらが所々に落ちていることからもわかるのだがルートははっきりしない。
いつもならGPSで位置を確認しながら進むところだが、今回はGPSを持ってきていない。とりあえずコンパスを見て南に向かうように進路を決めて進む。南に向かっていれば本来のルートから外れていたとしてもどこかで須走口登山道にぶつかるはずだから。
で、そうこうしているうちに何とか須走口登山道にぶつかった。思っていたより下に接続したなぁ。

本来のルートはもっと上で、本当に砂払い五合目まで行けるのかもしれないけれど、とりあえず今回接続した部分にも踏み跡が残っていることから考えると、正規のルートかは別として、主にキノコ採りの人であろうがここを通っている人が少なからずいるということだろう。GPSのログがあればもう少し詳しく分析して正規のルートを推測することもできたかもしれないけれども、惜しいことをした。でも、もともとはここを通ることは予定になかったのだから仕方がない。
そんなこんなで須走口五合目に無事到着。さすがに人は少ない。まぁ台風が近づいてきているのだから当然か。それでもごく少数ながら駐車場から山小屋方向に向かってくる人もいる。まさかこれから登頂を目指すわけではあるまい。小富士までのハイキングか?キノコ採りにいくにしては少々遅い時間だし。
帰宅後体重を量ってみたら、絶食72時間で、あれだけ苦労したのに出発前より2kgしか減ってなかった。どんだけ省エネ体質なんだよ私は!!
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